この記事で扱うのは、呉に着いたあとの話である。広島から呉までどう移動するかではなく、呉に降り立ってから市内をどう回るか。この二つを分けて考えないと、旅程はどこかで必ず破綻する。結論から書けば、車がなくても呉は回れる。ただし「どこまで回るか」によって、必要な手立ては変わる。一般に知られている事実の範囲で、行き先を三つの圏に分けて整理してみる。
第一の圏。呉駅から歩ける範囲
まず、歩いて回れる圏がある。大和ミュージアム、てつのくじら館、入船山記念館、そして市街地の商店街。呉の旅でよく名前が挙がる場所の多くは、この圏に収まっている。
車を持たない旅行者にとって、これは大きい。駅に着き、荷物を置き、あとは歩くだけで半日から一日は成立する。呉が「車がなくても回れる街」だと言えるのは、まずこの密度のおかげである。
歩いて回れるということは、時間の使い方が自由になるということでもある。次の移動の予定に縛られないので、気に入った場所に長くとどまれるし、疲れたら切り上げてもいい。旅の満足は、こういう余白の有無で決まることが多い。
第二の圏。歩くには厳しく、バスやタクシーが要る範囲
次に、歩けなくはないが現実的ではない圏がある。アレイからすこじま、宮原の高台、長迫公園などがここに入る。
距離だけの問題ではない。呉は坂の街なので、水平に測った距離が同じでも、途中に斜面が挟まるかどうかで歩く負担はまるで違ってくる。この圏は、路線バスやタクシーを前提に考えたほうがよい。
気をつけたいのは本数である。中心から離れるほど、公共の交通は本数が限られる。行きは順調でも、帰りで待つことになるのがこの圏だ。片道だけでなく、戻る手立てまで含めて考えておきたい。
もうひとつ、この圏の行き先は、坂の上と海沿いの端に散らばっている。方向がばらばらなので、一日に二つ以上入れるなら、地図の上で向きをそろえてから順番を決めたい。
第三の圏。車か、貸切の手立てがほぼ必要な範囲
最後に、車がないとかなり難しい圏がある。灰ヶ峰の夜景、そして音戸・倉橋・とびしま海道といった島の側だ。
夜景は、そもそも動く時間帯が夜になる。島の側は距離があり、しかも本数が限られる。この二つが重なると、公共の交通だけで組み立てるのは相当に難しい。ここを旅程に入れたいなら、車を用意するか、タクシーを含む貸切の手立てを検討することになる。
なお、貸切の手立てを使うなら、行き先をひとつに絞らず、その日のうちに回れるところをまとめてしまうほうが結果的に効率がよい。坂の上や島の側は、ひとつずつ往復していると、移動ばかりの一日になってしまう。
荷物をどこに置くかで、動き方が変わる
見落とされやすいのが荷物の扱いだ。車がない場合、荷物の置き場所は移動の自由度に直結する。大きな荷物を持ったまま坂を上ることになると、第二の圏はいっそう遠くなる。
宿に入る前に回りたいなら、駅の周辺で荷物を預けられるかどうかを先に調べておきたい。身軽になれば、第一の圏はかなり広く感じられるようになる。逆に荷物を抱えたままだと、歩ける範囲は目に見えて縮む。呉のように坂のある街では、この差がほかの街より大きく出る。
三つの圏を、日程にどう割り振るか
実際の組み方はこうなる。滞在が一日なら、第一の圏で完結させる。二日あるなら、二日目に第二の圏を足す。第三の圏は、車が使える日にまとめる。
やってはいけないのは、三つの圏を一日に混ぜることだ。移動のたびに手立てが切り替わり、そのつなぎ目で待ち時間が生まれる。呉の旅程が崩れるときは、たいていこの混ぜ方が原因になっている。
迷ったときの仕分け方
行きたい場所が坂の上か、島か、夜か。この三つのどれかに当てはまるなら、歩き以外の手立てを先に確保する。どれにも当てはまらないなら、たいてい歩いて届く。この単純な仕分けだけでも、計画の精度はかなり上がる。
まとめ
車がなくても呉は回れる。呉駅から歩ける圏に、主だった行き先が集まっているからだ。ただし、アレイからすこじまや宮原の高台、長迫公園まで足を延ばすなら路線バスやタクシーが要り、灰ヶ峰の夜景や島の側まで含めるなら、車か貸切の手立てがほぼ必要になる。行き先を三つの圏に仕分けて、圏ごとに日を分ける。これが、車を持たない旅行者にとっていちばん崩れにくい組み方である。
(ここに書いた内容は公開情報をもとにしている。路線バスの運行の状況やタクシーの手配のしやすさは変わるため、移動の計画を立てる前に、各事業者が示す公式の案内を確かめてほしい。)
コメント