「呉冷麺」と聞くと朝鮮半島の冷麺や、牛骨スープが特徴の盛岡冷麺を思い浮かべるかもしれないが、呉のそれはまったくの別物だ。実態は「冷やし中華」に近く、太めの平打ち麺と甘酸っぱいスープが特徴になっている。発祥の店と、名前の由来を整理する。
一般に「冷麺」と呼ばれる料理には系統がいくつかある。朝鮮半島式の冷麺はそば粉やでん粉を使った麺に氷の入った冷たいスープを合わせるもの、盛岡冷麺は朝鮮半島の冷麺を日本風にアレンジし牛骨・鶏がらのスープを合わせたものとして知られる。これに対して呉冷麺は中華麺をベースにした冷やし中華の系統にあたり、同じ「冷麺」の名を持ちながら、麺の原料もスープの方向性もまったく異なる。事前にこの違いを知っておくと、「呉冷麺」という名前から受ける印象と実物のギャップに戸惑わずに済むはずだ。
呉冷麺とは何か
呉冷麺は、1955年(昭和30年)に呉市の「珍来軒」が新メニューとして考案したご当地グルメだ。それまでの珍来軒の看板メニューはワンタン麺だったが、そこから枝分かれする形で呉冷麺が生まれた。
名前に「冷麺」とつくが、朝鮮半島の冷麺とは無関係で、実際には冷やし中華の一種にあたる。冷やし中華としては珍しい太めの平打ち麺を使い、甘酸っぱいスープをかけるのが呉冷麺の特徴だ。珍来軒では、先代が考案したタレと、それに合わせて誂えた特注の平打ち麺の組み合わせにこだわっており、甘みとピリッとした辛さが同時に広がる味わいに仕上げている。トッピングはキュウリ・チャーシュー・エビ・ゆで卵が定番で、卓上に置かれた酢辛子や黒酢を加えて味の変化を楽しむのが地元の食べ方とされる。2017年には呉市のご当地キャラクター「呉氏」の好物にも設定されるなど、呉を代表する食として扱われている。
「冷麺」という名前のせいで夏の食べ物と思われがちだが、珍来軒は年間を通して営業しており、涼しい季節でも変わらず食べられている料理だ。名前の印象と実態にギャップがある点も、呉冷麺という食べ物のユニークさのひとつといえる。
発祥の店「珍来軒」
珍来軒は、戦後まもなく呉市中通付近の屋台からスタートした店で、創業70余年の歴史を持つ。現在の店舗は呉市本通4丁目10-1にあり、営業時間は11:30〜15:00(売り切れ次第終了)、定休日は火曜・お盆・年末年始。平日でも行列ができる人気店として紹介されることが多く、呉冷麺を求めるなら真っ先に候補に挙がる一軒だ。
店頭メニューは、呉冷麺が大1,100円・小950円、看板だったワンタン麺が大1,100円、ラーメンが大1,000円・小900円という価格帯で紹介されている(価格は変更される場合があるため目安として捉えてほしい)。県外に出せない生麺の代わりに、通販ではスープとセットになった冷凍・冷蔵タイプの呉冷麺がひろしまブランドショップTAU等で販売されており、呉に行けない人でも味を確かめる手段はある。
珍来軒以外で食べられる店
呉冷麺は珍来軒発祥のメニューだが、現在では呉市内外の複数の店で提供されている。呉駅から徒歩圏・大和ミュージアム前の「呉ハイカラ食堂」、呉市安浦の「自家製麺 一村」、広島市中心部の「呉麺屋 胡通り店」などが呉冷麺を扱う店として紹介されている。ただし、これらは食べログ等のまとめ記事で紹介されている情報であり、営業状況やメニュー内容は変わる可能性がある。訪問前に各店の最新情報を確認することをおすすめする。
まとめ
呉冷麺は「冷麺」を名乗る冷やし中華で、1955年に珍来軒が生み出した呉のソウルフードだ。まずは発祥の珍来軒で本家の味を確かめ、余力があれば他の提供店で食べ比べてみるのも面白い。
(本記事は珍来軒公式サイト・Wikipedia等の公開情報をもとに構成しています。現地での実食レポートは別記事で扱う予定です。)
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